英中央銀行のイングランド銀行(Bank of England) は、2021年3月25日に新しい紙幣デザインを発表しました。
新50ポンド札にはアラン・チューリングが決定
その50ポンド札には、「人工知能の父」「計算機科学の父」と呼ばれた数学者のアラン・チューリングが採用されるとのことです。
発表によると流通開始は、チューリングの誕生日である6月23日
新50ポンドのデザインは、アラン・チューリングの肖像画のバックに、彼の論文に記された表と計算式や生年月日を2進数表記したティッカーテープが描かれます。
2019年時点でチューリングが採用されることは決まっていました。
アラン・チューリングとは?その実績
アラン・チューリングは、1912年にロンドンで生まれた数学者です。
当時猛威を奮ったナチス・ドイツの海軍作戦の暗号通信「エニグマ」を、自身の作成した暗号解読機で解読した人物として広く知られています。
そのほかにも、英国立物理学研究所やマンチェスター大学で、演算処理を機械に命令する「アルゴリズム」の基礎を確立したことでも知られています。
そのアルゴリズムを搭載した「チューリングマシン」を生み出します。
この「チューリングマシン」を発展させたものこそ「コンピューター」です。
また、人工知能の分野でも大きな貢献をしており、機械に「知能」があるのかを確認する「チューリングテスト」を構築しました。
しかし、このような輝かしい実績を残しながら晩年は非常に悲劇的なものでした。
1952年に、当時19歳の少年と性的な関係を持ったとしてわいせつ罪として有罪になってしまいます。
当時のイギリスでは、同性愛者には厳しくいかなる行為も認められていませんでした。
チューリングは、禁固刑か「化学的去勢」を伴う保護観察処分となり、後者を選びます。
1954年6月、チューリングは死亡しているのが発見されます。41歳でした。
検視結果から、青酸カリによる自殺と考えられています。
2009年8月、ジョン・グラハム=カミングが率いる団体が、アラン・チューリングを同性愛で告発したことへ謝罪するよう請願活動を始めます。
その活動によって数千に及ぶ署名が集まります。
最終的には、2012年に政府は恩赦の法案が提出され、2013年12月24日にエリザベス2世女王の名をもって正式に恩赦を行いました。
アラン・チューリング以外に検討された人物
アラン・チューリングの他に紙幣の最終候補者となったのは、以下の計11組。
ちなみにですが、アラン・チューリング
フレデリック・サンガー氏(生化学者、タンパク質のアミノ酸配列決定法とDNAの塩基配列決定法)
メアリー・アニング氏(古生物学者、化石収集)
ポール・ディラック氏(物理学者、量子力学に貢献)
ロザリンド・フランクリン氏(化学者、DNA構造のX線撮影)
ハーシェル兄妹(天文学者、天王星の発見)
ドロシー・ホジキン氏(生化学者、ペニシリンの構造決定)
チャールズ・バベッジ氏(計算機科学者、解析機関の考案)とエイダ・ラブレス氏(バベッジ氏の講演をまとめた著作)
スティーブン・ホーキング氏(理論物理学者、ブラックホールに関する理論)
ジェームズ・クラーク・マクスウェル氏(理論物理学者、マクスウェルの方程式)
シュリニヴァーサ・ラマヌジャン氏(インド人の数学者、ランダウ・ラマヌジャンの定数)
アーネスト・ラザフォード氏(物理学者、原子模型の提唱)