スコッチウイスキーには、スコットランド内に主要な産地が6つあります。
スコッチウイスキーは産地が違えば、同じウイスキーと言えど、味わいが違います。
今回は主要な6つの産地の中のアイランズ・モルト・ウイスキーについてご紹介します。
アイランズってどこ?
場所
アイランズとは、名前のままですが「島々」を指します。
スコットランドの島のことをまとめてアイランズと言います。
具体的に言うと、オークニー諸島、スカイ島、ルイス島、ジュラ島、マル島、アラン島のことを指します。
ちなみに、アイラ島も島の一つですがかなり特徴のあるウイスキーをつくる蒸留所があるので、アイラモルトとしてスコッチウイスキーの主要な産地として数えられているため、アイランズには含まれません。
アイランズを構成する島々は、スコットランドの北から西、そして西から南と半周するように点々と存在します。
実は、アイランズという分類は割と近年にされるようになったもので、それまではハイランドモルトの中に含まれていました。
しかし、「タリスカー」や「ハイランドパーク」を始め個性的で人気な銘柄が多いことからアイランズとして別枠で分類されるようになりました。
ポイント
アイランズは、オークニー諸島、スカイ島、ルイス島、ジュラ島、マル島、アラン島のことを指します。
アイランズ・モルト・ウイスキーの味わいと特徴
アイランズ・モルト・ウイスキーはいくつかの島々からなる産地の分類の一つであるため、一言でこんな味わいがあるというのは難しいです。
島ごとに特徴があるので、それぞれの島ごとに特徴をご紹介します。
スカイ島について
スカイ島はスコットランドの北西部に位置する、インナーヘブリディーズ諸島の最大の島になります。濃霧に覆われる日も多いことから霧の島とも呼ばれています。
観光地としても有名で色とりどりの建築物が多く、カラフルな街並みです。また、エメラルドグリーンに光る通称フェアリープールという川も流れています。
タリスカー蒸留所
この島にあるのが、タリスカー蒸留所です。
スカイ島は霧の島と言われるだけあって、非常に雨の多い地域です。
そのため、タリスカー蒸留所ではこの雨水の湧き水で創業以来作られています。ピートが堆積した層も通るのでピート香もあります。
タリスカー10年
タリスカー蒸留所の代表的な銘柄はもちろんタリスカー10年です。
タリスカー10年の特徴は強いスモーキーさとスパイシーさです。またほんのりと潮風も香ります。
ピート香もあるので、ラフロイグ、ボウモアなどのアイラモルトに近いとも言われます。
全体的にかなり力強い味わいで、わかりやすいです。
後味もわかりやすく洗練されていて飲みやすいです。
オークニー諸島
スコットランドのちょうど北端にあたるのが、このオークニー諸島です。
70以上の島々で構成されるこの地域も、観光地として人気です。
スカラ・ブレイ、リング・オブ・ブロッカーなど新石器時代の遺跡が多く存在します。オークニー諸島のパパウェストレー島には、ヨーロッパで現存する最古の石工住居があります。
ハイランドパーク蒸留所
オークニー諸島にある蒸留所と言えばまずハイランドパークでしょう。
ハイランドパーク蒸留所は北緯59度とウイスキーを作る上ではかなり寒いところで作っています。北海道の最北端が北緯45度ということから考えてもらうとわかりやすいと思います。
ハイランドパーク12年
ハイランドパーク12年の特徴は、なんと言っても「深い甘みと、スモーキーさ」だと思います。
甘みを感じますが、程よいスモーキーさが鼻を抜けるので、甘すぎず、クセも強すぎずバランスのとれた味わいです。
また、柑橘類の香りも感じられ、後味もすっと消えるので、ずっと飲んでいられるウイスキーです。
スキャパ蒸留所
スキャパ蒸留所は、ハイランドパークと同じくオークニー諸島にある蒸留所です。
こちらもやはり海沿いにある蒸留所で、熟成させる際には樽がいっぱいの潮風を浴びます。
スキャパ12年、14年、16年
スキャパという言葉自体はバイキング語で、意味は「ボート」だそうです。
スキャパ12年も、ほかのアイランズウイスキー漏れず、潮の香りとスパイシーさがあります。
しかし、ほかと違うのが甘みと上品さです。特に甘みはバニラのようでいて、パイナップルのようなフレッシュさの香りがスーッと鼻腔を抜けます。
それでいて艶っぽい味わいがあるかなり複雑な味を持っています。
一度飲むと忘れない味です。
年数が上がるほどフルーティで、オレンジピールのようにちょっと苦味があるような味わいになります。
ブレンデットウイスキーの「バランタイン17年」のキーモルトの一つであることでも有名なウイスキーです。
とても人気のあるウイスキーで売り切れになることも多いです。
売り切れる理由は他にもあって、2000年台前半に操業停止の期間があるため、今それが響いています。
ジュラ島
ジュラ島はスコットランドの西南部にある島で、あのアイラモルトで有名なアイラ島の隣にある島です。
自然豊かな街並みで、動物も非常に多く特に鹿と多さは群を抜いています。
それもそのはずで、実はこの「ジュラ」という言葉は現地のゲール語で「鹿」という意味だそうです。
古くからウイスキーが作られていた島で、少なくとも1502年にはウイスキーが作られていたという記録があります。
アイル・オブ・ジュラ10年
ジュラ蒸留所で作られるアイル・オブ・ジュラは、ノンピートで、ピートを焚かずに大麦を乾かしているので、とてもフルーティな一本です。
香りも高く、りんごとハチミツのようです。
また、アルコール辛さもあまりないので、ウイスキーの初心者でも飲みやすいウイスキーです。
マル島
マル島はスコットランドの西部にある島です。とても入り組んだ海岸が特徴的で、夏はリゾートとして賑わう島です。
近隣には、難破船が多くありダイバーにも人気な島です。
トバモリー蒸留所
そんなマル島にある蒸留所はトバモリー蒸留所のみです。もともとはビールの醸造所でしたが、その後ウイスキーの蒸留所となりました。そんなトバモリー蒸留所で作られるウイスキーは2つだけです。
トバモリー10年
トバモリー蒸留所の名称にもなっているウイスキー、トバモリーはノンピートです。
その為、あの独特のクセの香りが無いと思って飲むとビックリ!少しピート香がします。
これは利用している水が、堆積したピート層を流れて通った水を利用している為です。
レダイグ
レダイグはトバモリー蒸留所で作られるもう一つのウイスキー。トバモリー10年とは違いこちらはピートが強めのクセの強い味です。アイラ島から大麦を仕入れるということからもその特徴が見て取れます。
ただ、アイラ系とはまた一味違うスモーキーさがあります。潮風の香りが強くスパイシーで、少しオイリーです。
アラン島
アラン島はスコットランドの南部にある島のことを言います。アラン島と言っていますが、実は一つではなく3つの島から構成されています。
ストーンサークルなど、石器時代の遺跡が数多く残されていて、有名なものだとホワイティングベイと呼ばれる巨人の墓があります。
ウイスキーは古くから作られており、最盛期では50ヶ所もの蒸留所があったとされます。しかし、不況などを乗り切れず徐々に減っていき、なんと1836年にはすべての蒸留所が閉鎖になってしまいます。
アラン蒸留所
そして、1995年にやっとのことで160年ぶりに再開されたのが、アラン蒸留所です。
アラン蒸留所は20世紀最後に建てられた蒸留所としても知られます。
アランモルト10年
先述したアラン蒸留所で作られるウイスキーです。アラン蒸留所の特徴としては資本がアラン蒸留所のみということもあり、シングルモルトウイスキーの製造に徹底していることです。
そこの代表銘柄がこちらのアランモルト10年です。10年ものとは思えない熟成された味わいで、口当たりが柔らかく、なめらかです。アルコール辛さも少なく、クセも少ない味わいです。かといって、無個性というわけではなく、シトラスのフルーティさが広がりますし、ウイスキーらしい大麦の甘さも体感できます。
ウイスキー初心者にもお勧めできる一本です。
ルイス島
ルイス島はスコットランドランドの北西部にある島のことを言います。しかし、少し複雑でこの島の北側のことをルイス島と言い、南側のことをハリス島と言います。1つの島なのに場所によって名称が変わるという珍しい島です。
ルイス島で出土した製作時期がおそらく12世紀頃のチェスの駒が有名です。
現在は大英博物館に保管されています。
景観は見事で自然豊かな地域です。
ちなみに、ハリス島はあの防寒具の「ハリスツイード」の誕生地として有名です。
アビンジャラク蒸留所
今まで紹介して来たような歴史ある蒸留所ではありません。むしろかなり新しいです。
創業なんと2008年です。シングルモルトを売り出したのは2011年です。
また、蒸留所は自然が豊かで景観もいいところに建てられる傾向がありますが、この蒸留所は周りが採掘場とイマイチです。
ただ、製法にはかなりこだわっており「畑からボトルまで」というのをモットーとしています。
・大麦は自家栽培。
・蒸留するポットスチルも自社開発。
・水も地元のアビンジャラクの川から使っている
というように出来るだけ地元の原料を使い、独自の製法でウイスキーを作っています。(ただ、熟成に使う樽はアメリカン・オークです。)。
アビンジャラクシングルモルト スペシャルエディション
こちらが、2011年にアビンジャラク蒸留所が最初に発売したのはシングルモルトウイスキーです。
熊のラベルが特徴的です。2011年に2011本限定で発売されました。
アビンジャラクシングルモルト
そして、現在販売されているのが、こちらの通常のアビンジャラクシングルモルトです。
日本ではなかなか取り扱いがないのか、筆者は試したことがないので、味わいについてはかけません。すみません。
最後に
アイランズ・モルト・ウイスキーは他の主要産地のように特徴が一言では伝えづらく、島によって変わります。
言い換えれば、島によって特徴が変わるので、距離的には隣の島でも全然違う味わいを持っています。
そんなことを考えながらウイスキーを飲むとまた面白いかも知れません。